IB修了生の声・教育関係者のコラム

自由に思考し、探求することの楽しみを教えてくれたIB教育

大阪女学院高等学校 2023年3月卒

奥村 めいさん

大阪女学院高等学校を2023年3月に卒業。 現在はアリゾナ州立大学(Arizona State University)に在籍し、主専攻としてマーケティ ングを、副専攻として中国語を学んでいる。

IBを通して身についた力

 私がIBで得た学びは数え切れないほどありますが、その中でも特に身についたと感じるスキルは大きく二つあります。一つ目は自問自答(批判的思考)する力です。例えばTOKなど、IBならではの答えのない問いに向き合い続けることは、なぜ自分はそう考えるのか、その考え方は正当化できるものなのか、自分の中にある「普通」の根源を自ら問い続ける力を培う機会になりました。このように、表面的な回答にとどまるのではなく、自分にしかない答えを探求し続けることは自分の思考の癖や価値観などの自己認識に繋がったと感じます。二つ目はコミュニケーション能力です。ここでのコミュニケーション力とは自分の思考を相手に理解してもらえる形に合わせて言語化するという意味を指しています。私とクラスメートでは考え方も普通の定義も全く違うものであり、「わかるよね?」の姿勢ではなく、相手に伝わるように自分のメッセージの伝え方を必要がありました。きちんとこれが成立しないとディスカッションが進まないため、コミュニケーション力は特に重要だと感じます。

IBで身につけた力の活用

 将来自分がしたいことの方向性がある程度絞れた状態で大学の専攻を決めることができたことはとても良かったと思います。IBでの学問はとても自由度が高く、自分でテーマを決めて分析する科目も多かっため、「私、これに興味あるかも!」という気付きに繋がる機会は多かったように感じます。大学在学中も専攻の選択だけでなく、クラブやコミュニティなど、早い段階で自分が参加したいと感じられる場所を探すために自ら働きかけることができたと思います。
 また、私は中学校までの日本教育からIB教育への「学習方法の違い」を経験したことで、国や地域ごとの教育方針の違いに興味を持つようになりました。IB卒業後はアメリカの大学に留学し、在学中には台湾への交換留学も経験しました。私は二度の留学を通し、「どのように地域ごとの教育方針が異なるのか」について現地で実際に触れ、何が生徒にとって良い教育と言えるのかについて視野を広げて考えることができました。
このような私の探求力は、CAS活動を通して得た、興味を形にするための「計画し、行動する力」があったからだと強く感じます。

TOK(知の理論)で学んだこと

TOKにおいて最も重要だと感じたことはエッセイテーマや事例の具体化と定義です。特にTOKエッセイのお題は時に抽象的であり、自分で具体化と定義をすることで一貫して解答することができます。また、事例を一般化する際や自分の思考を言語化する際の「妥当性」については、その事例がケースバイケースなのか否か、複数の事例における「普遍性」や「一貫性」は何かを軸にし、自分のエッセイに偏りがないかを資料を照ら
し合わせながら何度も試行錯誤しました。IBは何を結論としているのかよりも、そこに到達するまでにどのようなプロセスを踏んだかを評価してくれる教育だと思っています。わからないなりに自分でデータやエビデンスを集め、複数の視点を取り入れ、バランスの取れた結論を出す。この姿勢を得たことで、私は大学で授業に参加する際も、事例に対し、本当に一つの判断基準だけで評価できるのか、その判断基準における妥当性と限界性は何か、他の考え方はできないかという視点を取り入れて取り組むことができています。

CAS(創造性・活動・奉仕)で印象に残っていること

 私が特に印象に残っているCAS活動は、海外進路室でのセミナーのボランティアです。私も初めは海外留学についての情報を得るためのみに海外進路室に訪れていましたが、回数を重ねるうちにもっとたくさんの生徒に自身のキャリアについて考える機会を持ってほしいという思いを持つようになり、定期的に中学生・高校生に向けた進路セミナーのホストとして携わるようになりました。この経験を通し、進路について興味はあるが
なかなか情報収集までには辿り着けない、一人でそのような場に参加する勇気がない、などの理由で今までなかなか進路について考える機会に参加できなかった生徒が意外に多いことに気づきました。ここから、私にとっては普通だったことも、立場や環境が変わると受け取り方は全く異なることを学び、普通を俯瞰し、課題を特定し、全て自分達でプロジェクトを立ち上げ、解決のために取り組むことができました。私にとって最初から最後まで全て自分達で学校単位のプロジェクトを動かすことができたこと、そしてそれをやり遂げられたことは自信と達成感に繋がりました。

大学受験や進路選択で意識したこと

 私は進学するに当たって学問的に深めたいと感じる科目が複数あったことを覚えています。結局、進学までに専攻を一つに決め切ることはできず、実際にその専攻について学んでから将来その道に進むのかどうか考えようと感じたため、専攻変更に柔軟なアメリカを進学先として選択しました。結果、この判断はとても適切だったと感じます。国や大学ごとに教育の方向性は大きく異なりますが、自分の立場と照らし合わせてみて、どの地域、どの大学の特徴が自分の強みを最も最大化できるのかを考えてみることが自分に合った大学選びにとても重要だと思います。また、既に自分が何を専攻したいのかを把握している場合は、EEや各科目のIAのテーマと大学での専攻を関連させるのがとても良いと思います。大学に進
学した際、EEやIAの小論文を通して、教授との「共通点」を主張することができますし、自分の興味を相手に提示し、早めの段階から教授との関係性を深めることができます。大学においての教授との繋がりは様々な学びの機会に繋がるため、このような事前準備はとても重要だと感じます。

今後のキャリアについて

 私は今年で卒業なのですが、現時点では留学&キャリアカウンセリングの仕事をする予定です。この決定に至った経緯をお話しすると、IBで感じた葛藤が大きく関連しています。私は一般的な中学校からIBから入学したため、それまで受けてきた教育とは全く異なるIBの学習方針や、IBが求める評価基準を理解し、それに沿って課題を進めるのにとても苦労したことを覚えています。自分のやり方が本当にこれで合っているかわからない、授業のレベルが私の実力と乖離していたため理解が追いつかない、そんな中で誰に聞けばいいかわからないという不安が大きくありました。この経験から、私は自分が辿ってきた道や、自分なりに苦戦したことを糧に、自分の経験や情報、人とのつながりを活かして、それらを必要とする人々に還元したいと強く感じるようになりました。
 今書いているこの記事も私の経験やストーリーがMYP、IBDP生にとって役に立つものでありたいと心から感じています。自分が先頭に立ってリードし、人々に示唆を与える。そのためにも、より多くの経験を積み、世界を知り、専門性を高める努力をし続けられる人になりたいと思っています。

IB校での学びの環境や人との関わりで、印象に残っていること

 私にとって少人数規模で教育を受けられたことは大きな喜びでしたし、11人で過ごした3年間は友情と学びの面において一生の宝物です。中には少人数だったからこそ得られた気付きも多くありました。例えば入学当初、私は先生からの質問にあまり時間をかけずに回答する傾向があり、意見においては質より量やスピード感が一番大事だと感じていました。しかし、11人の中には回答するまでに時間がかかる分、様々な観点からの意見を共有してくれるクラスメートもいました。私は最初、なぜそこまで回答に時間をかけるのだろうと疑問に思っていましたが、彼女の徹底的な分析があることで、その意見を基にクラス全員でもう一度考え、ディスカッションに更に深みを得ることができることに気付きました。ここから、自分が正しいと思っていたことの概念が常に一貫して正しいわけではないことに気付き、それ以降は一人一人の物事の取り組み方とその良さを見ることができました。少人数という環境の中だからこそ一人一人に向き合えることはIBにおいての最大の価値であると言えると思います。