IB修了生の声・教育関係者のコラム

鳥取県立倉吉東高等学校 2026年3月卒
椿 彩子さん
鳥取県立倉吉東高等学校 を2026年3月に卒業。 現在は広島大学教育学部に在籍し、多文化共生教育・平和教育・国際開発教育を学んでいる。
IBを通して身についた力
IBの学びを通じて、最も身についた力は「多角的な視点から客観的・論理的に考える力」です。IBの学びでは、常に情報や前提を無批判に鵜呑みにせず、「本当に正しいのか?」「他に方法はないか?」と、客観的・論理的に問い直すことが求められました。
例えばTOK(知の理論)では、さまざまな問いに対してみんなで議論をする際に、「本当に問われていることは何なのか」「それに私たちはどう向き合っていくべきか」を考え続けました。それは、自分の学びを俯瞰し、問いの本質に迫るという作業だったと思います。初めはもちろん難しく、十分にできないこともありましたが、2年間の学びの中で常にそれを意識し続けたことで、どの学びにおいても批判的思考を持って取り組むことができるようになりました。この力は、大学やその先の未来を含め、今後何かを学んでいく上でも非常に重要な力であり、IBで学んだ大きな成果だと思います。
IBで身につけた力の活用
IBで身についたスキルは、大学の学びをより深めるために日々活かされています。特に批判的思考力は大学でのディスカッションやプレゼンテーション、レポート作成など、あらゆる場面で発揮されていると思います。
大学ではレポートを書く機会が非常に多いですが、IBで各教科のIA(内部評価)やEE(課題論文)に取り組んだ経験から、ただ意見をまとめるだけでなく、問いを立て、問いの前提を定義し、批判的視点や限界を示しながらレポートの中で論理的な議論を展開することができています。
また、英語を用いた学びでもIBで身についたスキルや力が活きています。入学してすぐ、自分が何を学ぶために大学に入学したのかや、将来のプランについて英語でプレゼンテーションをする機会がありました。その際も、英語を使うことに抵抗なく、分かりやすく伝えることができました。IBの学びの中で、実際に英語でプレゼンを重ねて得た経験が、しっかりと活かされていると感じます。
TOK(知の理論)で学んだこと
TOKは問われていることに対して定義を整理し、問いの本質に迫ることができる時間であると同時に、「知識とは何か」を考え、自分の学びを客観的に見つめなおす非常に重要な時間だったと思います。特に、実社会との繋がり(RLS※)を考えた経験は、生活の中に学びを見出すきっかけをくれました。何気ない普段の出来事や社会情勢にも「なんでだろう?」「何をもってそうなったのだろう?」「じゃあこれはどうなのだろう?」と多角的な視点を持って接することができるようになり、自分が学習者として成長できたと感じています。
私は、ただ知識を得るのではなくて、知識との向き合い方を立ち止まって考えるのがTOKであり、この学びが他の教科の学びを支えていると思います。TOKで問いへの向き合い方を習得できたことは、今大学で取り扱っている正解のない問いに対しても非常に役立っています。
※RLS(Real-Life Situation):「現実世界の出来事」のこと。TOK(知の理論)の授業では、頭の中だけで考えるのではなく、「ニュースで見た出来事」や「日々の生活での実体験」などのリアルなエピソードを出発点にして、深く考える訓練を行います。
CAS(創造性・活動・奉仕)で印象に残っていること
私にとって特に印象深いCAS(創造性・活動・奉仕)は、高校2年から3年まで取り組んだ広島でのピースボランティアです。
もともと平和・戦争といった分野への関心が高かったこともあり、鳥取からの遠方参加でしたが、継続的に広島まで行って活動しました。原爆に関する平和学習や研修に加え、8月6日前後に開催される「全国平和学習の集い」のボランティアとしてディスカッションのファシリテーターを務めました。
全国から集まった小中高生が、議論を通じて平和についての理解を深められる場を作るために、知識を事前に身につけておくのみならず、参加者一人一人の背景知識などに着目しながらファシリテーターを務めたことは今にもつながる非常に良い経験でした。また、被爆者の方々の体験講話を何度も聞く機会をいただき、自分が何のために平和学習をするのか、なぜ関心があるのか、平和とは何かなど本質的な問いに向かう良い機会になりました。
大学受験や進路選択で意識したこと
私は高校に入学する前から、志望校の大学や自分の学びたい分野がある程度決まっていたこともあり、迷うことはほとんどありませんでした。しかし、「自分が学びたい分野は本当にこれであっているのか」「なぜ学びたいのか」「学んだ先にどのようなキャリアを描くのか」といった問いについては、かなり長い時間をかけて考えました。担任の先生と面談を重ねたり、さまざまな本や資料、社会情勢に触れたりする中で、少しずつ自分の考えを固め、言語化していきました。
また、大学入試がIBのFinal Exam(最終試験)の時期と被っていたため、志望理由の作成や小論文、面接の対策などは、早めに準備に取り掛かるよう心がけました。多くのタスクを同時に並行して進めるのは大変でしたが、早い段階から自分の軸となる部分を固めておいたことが、結果として非常に大きかったと思っています。
今後のキャリアについて
私は、多文化共生教育、平和教育、国際開発教育を専門とする学科に入学しましたが、その中でも特に力を入れたいのが「平和教育」です。その理由は、教育が人の成長において最も重要な要素の一つであり、教育を通した平和へのアプローチが必要不可欠であると考えているからです。
私は将来、教育者として国内外で「平和教育」を実施し、平和な国際社会の実現に貢献したいと考えています。またその一環として、IB的な学びを社会に広げていくことも必要だと思っています。IBでは批判的思考力や論理的思考力、議論を伴うコミュニケーション力など、多様な力を培うことができます。これらは、国際社会における課題解決において、まさに求められる力です。
IBの使命である、「より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を実現したいと強く思っています。
IB校での学びの環境や人との関わりで、印象に残っていることは?
私の母校である鳥取県立倉吉東高校は県内初のIB認定校であり、私はその1期生としてIBプログラムを履修しました。前例のない中での学びは、全てが手探りでの挑戦でした。先生方も生徒も、整備されたばかりの新しい教室で、日々の課題や学びに頭を悩ませながら、全員で乗り越えた2年間だったというのが、強く心に残っています。
私を含め1期生は8人のみでしたが、少人数だからこその絆も生まれたと思います。時には、IAやEEなどの提出物をみんなでチェックしあったり、授業の内容や進路、スケジュールなど些細なことでも共有しあったり、お互いがお互いの学びを支え合いながら過ごした時間は、今振り返ってもとても貴重な経験でした。8人の仲間、そして先生方とともにIBに全力で取り組めたことは自分にとっても大切な思い出であり、今の学びを支える大きな糧となっています。