IB教育の好事例

仙台育英学園高等学校 2023年度卒
清水 陵雅さん
秀光中学校・仙台育英学園高等学校で6年間IBを学び、2023年3月に卒業。 現在は立命館大学 情報理工学部に在籍。
「生涯学習者」として成長していきたい
中学校3年間のMYPでの授業を通して、IBの教育は、相手に物事を分かりやすく伝えるコミュニケーションスキルや論理的思考力といった、将来社会に出たときに求められる「生涯役に立つ力」を養うことが出来ると強く実感しました。「主体的な学び」と「多角的な視点」を重視しているIBの教育方針は、まさに自分に合っていると感じ、強く惹かれました。 MYPの一部である、高校1年次のPersonal Project (PP*1)で行った、寄付を通じた支援を目的とする募金Webサイト「Donate For Everyone」の作成とその取り組みは、大変印象深い思い出です。Webサイトを作成するうえでの調査探究が身になったことはもちろんのこと、この取り組みを通じてDPの学習を進めていく上で必要となる自己管理スキルを大きく成長させることが出来ました。実は、このPPの内容で校外のコンテストに応募したのですが、そのために期末考査、PPの最終提出、コンテスト応募の日程が重なり、タスクに追われたストレスフルな日々が続いたことを、今でも鮮明に覚えています。今振り返っても、非常に多忙なDPの2年間を終えた今もなお、PP最終原稿提出期限直前の2週間は、これまでの人生で最も忙しかった時期だったと感じています。課された課題は後回しせずにすぐに取り組むようになったり、常に完璧主義でいるのではなく、程よく力の入れ具合を程よく調整したりするといった当たり前のことを当たり前に出来るようになりました。このように、コミュニケーションスキルや、自己管理スキルをはじめとするATL(Approach to Leaning*2)スキルをDPの2年間を通じて向上させることができたと強く感じています。 また、この取り組みの中で、先生方の温かい支援にどれほど助けられたかを強く実感しました。おかげ様でコンテストでの表彰獲得にもつながり、いつか先生方へ恩返しをしたいと考えるようになった、一つの大きなきっかけとなりました。そんな高校生活の節目となる、本当に自分にとって大事な意味を持つ思い出です。
また、私は英語が好きなので、英語で書かれた教科書を利用して学習したり、提供言語が英語による授業を受けられたりする、活きた英語に囲まれる2年間にすることが出来るということにも強く惹かれました。こうした、内容の濃い2年間を過ごすことが出来る魅力的なカリキュラムのもとでIBが掲げている「生涯の学習者」として成長していきたいと思い、高校2-3年次においてもディプロマプログラム(DP)を履修することを決断しました。
※1:MYPにおける探究課題の一つ。個人的に興味をもつ分野について、年齢にふさわしい探究に自主的に取り組む機会をとなる。生徒は探究、行動、振り返りプロセスを通して、ATLのスキルを学ぶ。
※2:「学び方を学ぶ」ために重要な汎用的スキルで、MYPでは5つのカテゴリーと10のクラスターで整理されている。
クラスメイトや先生の存在が非常に大きく、私だけの力では絶対に成功に繋がらなかった
全体的に、IBDPの2年間は非常に楽しみながら毎日の学習に取り組むことができましたが、文系科目の課題や予習には苦労しました。特にJapanese Aの予習は、人物像が表されているところや心情変化が起こっている点を見逃さないように深く読み込む必要がありました。文学作品を読む自体が得意では無かった私にとって、長い文章を何度も読み返さなければならないのは非常に大変でした。学習内容の定着という面においても、文系科目は潜在的なセンスを磨いたり、膨大な情報を活用できるようにしたりする必要があり、正しい学習のアプローチが分からずに苦戦しました。そのような中で無事DPを修了することが出来たのは、クラスメイトの存在が非常に大きかったです。一緒にオンラインホワイトボードツールを活用して意見交換をしながら知識や概念を整理したり、授業外で文学作品について話し合ったりしたことで、苦手な分野にも少しずつ前向きに取り組めるようになりました。
培った論理的思考と文章力は実生活でも役立っている
論文分析やレポートの執筆を通して論理的に文章を組み立てる力を高めることも出来るようになりました。各教科の探究にあたって先行研究に触れる中で論理的に文章を組み立てる重要性に気付いたところから始まり、レポートやEE(*3)の執筆を通して論理的思考力や文章力を養うことが出来ました。全体的に、IBDPの2年間では論文分析やレポートの執筆を通して論理的に文章を組み立てる力を高めることが出来ました。 各教科の探究にあたって先行研究に触れる中で論理的に文章を組み立てる重要性に気付いたところから始まり、レポートやEEの執筆を通して論理的思考力や文章力を養うことが出来るようになったと考えています。
*3:生徒が関心のある研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめる。
主体的に考えて新たな知識にアプローチすることは、記憶の定着にかなり効果的
生徒が主体となって進める学びのスタイルがIBの一つの大きな特徴です。プレゼンテーションやグループワーク、ディスカッションなどを行う機会が多く、生徒自らが活躍する機会の多い授業が多く設計されています。また、知識や学びに対するアプローチもグループワークや探究活動などを通して、自ら考えさせることで、新たな知識に対してアプローチしていく学習方法は、記憶を定着させるうえでもかなり効果的だと感じました。特に印象に残っている授業はDPカリキュラムの中のTOKという教科です。本来は受け身で習得しがちになっている知識そのものについて、その性質や傾向について探究するという学びが新鮮で、興味深く取り組むことが出来ました。正解の無い問いについて探究することは難しかったのですが、クラス内でのディスカッションを通して互いの意見をより深められたとともに、新しい考え方に出会うことが出来ました。
自分の強みを最大限に引き出し、受験を有利に進められた
大学受験に関しては、私はDPの最終試験に専念できる環境を作りたいと強く思っていたため、受験時期が最終試験と被らない指定校推薦を選択しました。指定校推薦では、一定の学力に加えて、自分の強みを効果的にアピールする力や論理的な思考力が求められますが、IBの授業を通じて自分の意見を明確に表現するスキルやコミュニケーションスキルは鍛えられていたため、志望理由書や小論文課題に取り組む際に有利に進めることが出来ました。また、DPでの多忙な日々を通じて培った自己管理スキルも、DPと大学入試を両立させる上で大いに役立ちました。こうした経験を通じて、自分の強みを最大限に引き出し、受験を有利に進められたと感じています。最終試験に集中する環境作りにもつながり、安心してDPの締めくくりに挑むことができました。
IBの学びは、大学での学び方で役立つスキルを高校生時代から身に着けられる
IBの学び方は、多くの生徒に良い影響を与えると思います。高校生として必要な基礎学力を養いつつ、本来は大学生以降で経験するような論文執筆・プレゼンテーションやグループワークを通して幅広いスキルを身に着けられるからです。実際に、IBの授業で培った自己管理スキルや論理的思考力スキルは、現在の大学生活において大いに役立っています。IBで学んだことの価値を、今でも心の底から実感する場面が多々あります。一方で、大学進学に直接的に関わる高校2年生・3年生次にDPに挑戦すると言う選択には大きな勇気がいることと思います。ただ、どちらの道を選択したとしても、その選んだ道で惜しみない努力を積み重ねたのであれば、間違いなくそれは自分にとって価値ある2年間となっています。その決断が自分にとって良いものであったのか、そうでないかを決めるのは自分次第です。 自分が選んだ道で必死にもがいて爪痕を残すのだという覚悟を持って励み続けましょう。