IB修了生の声・教員の教育実践事例

大阪府立水都国際中学・高等学校 2025年3月卒
奥田 莉有さん
大阪府立水都国際中学・高等学校を2025年3月に卒業。 現在はオランダのティルブルフ大学(Tilburg University)に在籍し、Global Law(国際法)を専攻している。
IBを通して身についた力
IBプログラムを通じて身についた力の中で、最も大きいと感じているのは「問い続ける力」と「考えを言葉にする力」です。プログラム開始当初は、自分の意見を文章で論理的に表現することが苦手で、エッセイ課題では何度も修正を求められました。しかし、IBでは一度書いて終わりではなく、フィードバックを受けながら何度も考え直し、書き直すことが求められます。その過程で、結論よりも思考の過程そのものが重要であることを学びました。また、正解が一つに定まらない問いに向き合う経験を重ねる中で、安易に答えを出すのではなく、根拠を持って考え続ける姿勢が身につきました。これらの力は、IBならではの探究型の学びを通じて培われたものだと感じています。
IBで身につけた力の活用
IBでは自ら問いを設定し、資料を収集・分析しながら結論を導く経験を重ねてきました。そのため、大学でレポート課題に取り組む際にも、先行研究を踏まえつつ、自分なりの視点を持って論点を整理することに抵抗がありません。特に法律は、単に条文を当てはめるのではなく、それぞれの立場や社会的背景を考慮しながら解釈することが求められます。IBで培った「一つの答えに飛びつかず、複数の視点から状況を整理する姿勢」は、判例分析やディスカッション型の授業において大きな支えとなっています。また、多国籍な学生が集まる授業では、異なる価値観や立場が前提となる議論が日常的に行われます。相手の意見を尊重しながら自分の考えを根拠とともに伝える姿勢は、IBで培われたものだと感じています。学問への向き合い方そのものが大学生活の土台となっており、「IBをやっていてよかった」と実感する場面が多くあります。
TOK(知の理論)で学んだこと
TOKの授業を通じて私が学んだのは、「知識は決して絶対的なものではなく、前提や立場によって影響される」という視点です。TOKエッセイや展示では、正解を導くこと以上に、「なぜそう考えるのか」「他の見方はあり得ないのか」を問い続けることが求められました。
TOKエッセイでは、同じ「知識」であっても、分野によって評価基準や役割が異なることを学びました。また、展示を通して、知識や信念、意見が日常の中で曖昧に混ざり合っていることに気づき、自分自身の思考の前提を見直すようになりました。TOKで培ったこの姿勢は、現在国際法を学ぶ中でも、一つの価値観にとらわれず、複数の立場や歴史的背景を踏まえた上で「何が正義とされているのか」を慎重に考える力として生きています。
CAS(創造性・活動・奉仕)で印象に残っていること
CASの中で最も印象に残っているのは、フィリピンでのボランティアです。ルーガウやチャンポラードなどの家庭料理を炊き出しする中で、スラム街やダンプサイト周辺で暮らす子どもたちと出会いました。彼らの多くは、筆記用具や学費を十分に確保できず、仮に学校に通えたとしても、片道二時間以上かけて徒歩で通学しなければならない厳しい環境に置かれていました。子どもたちは明るく、自身の生活に対して表立った不満を口にすることはありませんでした。しかし、その裏では、教育を受ける機会が制限され、将来の選択肢が著しく限られている現実がありました。教育を受けられないことが貧困の連鎖を生み、その連鎖から抜け出すことが極めて困難であるという構造的な問題を、私はこの経験を通して初めて実感しました。以前から関心を持っていた法律という分野に、社会的課題を解決する手段として改めて魅力を感じるようになったのは、このCASでの経験が大きなきっかけです。
大学受験や進路選択で意識したこと
将来は、法を通じて社会的不平等に向き合うキャリアを築きたいと考えています。幼少期に模擬裁判で裁判官役を経験したことから、当初は裁判官を志していましたが、フィリピンでの経験や国際法の学びを通じて、現在は弁護士という進路にも強い関心を持つようになりました。立場は変化しても、「法を用いて人々の声を社会に届ける」という軸は一貫しています。今後は英語に加えてオランダ語の習得にも力を入れ、オランダで法律を学び続けながら、日本とヨーロッパをつなぐ架け橋となる存在を目指したいと考えています。IBで培った探究心と多角的な視点が、その基盤になると感じています。
IB校での学びの環境や人との関わりで、印象に残っていること
私が通っていた水都国際高校のIBクラスは20人ほどの少人数制で、生徒同士が意見を共有しやすい環境でした。全員があえてIBを選択しているという共通点があり、将来の進路は異なっていても、学びに対する姿勢やモチベーションには共通するものがありました。そのため、学校行事や課外活動、グループワークでは自然と協力し合う雰囲気が生まれていました。課題や進路に悩み、何度も立ち止まりそうになりましたが、そのたびに先生や友人が真摯に向き合い、支えてくれました。この環境があったからこそ、最後までIBをやり切ることができたと感じています。
また、大学進学後、IB修了生同士で自然と会話が弾む場面が多くあり、IBでの経験が国や学校を越えて共有できる「共通言語」になっていることを実感しました。ヨーロッパではIB経験者が多く、科目選択やEEの話題をきっかけに初対面でも深い議論につながることがあります。高校時代に築いたIBでの学び方や価値観が、卒業後も人とのつながりを生み続けている点は、IBならではの大きな財産だと感じています。