IB教育の好事例

「IBを経て、生化学への道へ」

山森 葉月さん

東京都立国際高等学校 2020年度卒

山森 葉月さん

東京都立国際高等学校を2021年3月に卒業。2024年にImperial College London(イギリス)で学士課程を修了。博士課程にストレート入学。現在はDuke University(アメリカ)で生化学の博士課程に在籍中。

IB校との出会い

 IBは国際バカロレアという名前の通り、国際的に認知され、世界各国の学校で提供されている点が魅力です。私がIB校を選んだ理由の一つは、海外在住時にIB教育を受け、その学びを国が変わっても継続できることでした。また、中学生の頃から海外大学への進学を考えていたため、IBの資格が日本国内外の大学で認められる点も大きな決め手でした。中でも、都立国際高校は公立の一条校でありながらIBコースを提供し、文化祭や体育祭、部活動など日本の高校生活を楽しみつつ、海外大学進学を目指せる環境が整っています。日本の高校生活を満喫しながら海外大学への道も開ける環境に魅力を感じ、入学を決めました。

IBの授業はどんなもの?

 IBの授業は生徒の意見を中心に展開されます。自分の考えを発信することはもちろん重要ですが、それだけでは議論は成り立ちません。他の生徒の意見を注意深
く聞き、異なる視点を受け入れながら、自分の考えを発展させる力が求められます。このような授業を通じて、私は発言する力だけでなく、積極的に耳を傾け、議論をより深める姿勢の大切さを学びました。
 授業の中で特に印象に残っているのは、各科目の最終スコアの一部となるInternal Assessment(IA※1)です。この課題では、関心のあるテーマを具体的な問いに落とし込み、仮説を立て、実験データや文献を分析し、論理的にまとめるもので、過程は大変でしたが、完成したときの達成感は格別でした。私はIAを通して、研究の道に進んでみたいと思うようになりました。
※1:IBDP教科の探究課題。所属校において評価が行われる(IA、内部評価課題)。

IBで得たものや成長したことは?

 IBプログラムを通して得たもので、入学前には想定していなかったものの、卒業後も残り続けているのは、IBプログラムを通じて出会った友人たちです。都立国際高校のIBプログラムは比較的少人数で、同じ授業を受けることが多いため、お互いを知るのに時間はかかりませんでした。また、多くの課題を共に乗り越えるうちに、いつの間にか深い絆が生まれました。高校卒業後、友人たちはそれぞれ異なる国へ進みましたが、久しぶりに再会しても、まるで昨日会ったかのように話せる大切な存在です。
 また、IBでは課題の量が多く、履修科目や課外活動によって忙しい時期が異なります。そのため、仲間が大変な思いをしていないか気を配り、できる限り助け合うことを意識するようになりました。この経験を通じて、相手を思いやる姿勢が自然と身につきました。

IBの課題やプロジェクトで大変だったこと

 高校2年生の時期に、Extended Essay(EE※2)に加え、各教科の課題、部活動や委員会などの課外活動との両立をするのが特に大変でした。限られた時間の中で
効率的に取り組むために、スケジュール帳を活用し、題を細分化して整理しました。また、空いている時間を計算し、やるべきことを視覚化することで、計画的に進めることができました。
 最終試験では、科目によっては、質問セッションを設け、互いに問題を出し合うことで理解を深め、文学や世界史のような分析が伴となる科目では、クラス全体でグループ通話をしながら、意見を共有し、学びを深めました。試験勉強は大変でしたが、友人と一緒だったので、比較的楽しく乗り越えることができました。
※2:生徒が関心のある研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめる(EE、課題論文)。

大学受験はどのように取り組みましたか?

 私はアメリカとイギリスの大学を受験しました。私の高校では11月に最終試験があるため、アメリカの大学の出願、奨学金の応募、最終試験の準備が重なり、スケジュール管理が少し大変でした。しかし、最終試験の勉強をできるだけ早めに始めることで、受験と並行しながらも落ち着いて試験に取り組むことができました。大学出願用のエッセイは、学校の先生に見ていただきながら推敲を重ねました。一方、イギリスの大学はオックスフォードやケンブリッジ以外は、最終試験の後に出願するため、比較的余裕を持って準備できました。また、IBのスコアがそのまま受験に使えるため、負担が少なかったです。ただし、出願条件に特定の科目が含まれていないと受験資格を得られないため、イギリスで学びたい分野が
決まっている場合は、IBの授業選択時点で進路をある程度考えておくことをおすすめします。

IBを通して、どんな力やスキルが身につきましたか?

 IBを通して身についたスキルの中で、今でも最も役に立っているのは、「疑問を持つ力」と「プレゼン力」です。IBでは、EE、IA、Theory of Knowledge(TOK※3)のエッセイといった課題で、自分でテーマを設定することが求められます。また、CAS(※4)でも自分で選んだ課外活動に取り組みます。このように、自ら何かを始めることで培われた「疑問を持つ力」は、大学生活での学びを深め、大学院での研究の基礎を築くのに役立っています。 
 また、授業を通じて、情報を分かりやすく視覚的・論理的にまとめ、人前で話すプレゼン力も身につきました。海外の大学ではプレゼンテーションの課題が多く、大学院でも研究成果の発表が求められます。そのため、IBでのプレゼン経験が大いに活かされています。
※3:IBDPのコア科目の一つ。知識の性質、範囲、限界、 および知るプロセスについて熟考する機会を生徒に提供する(TOK、知の理論)。
※4:IBDPのコア科目の一つ(創造性・活動・奉仕、Creativity Activity Service)。

IBの魅力と進学へのヒント~経験者からのメッセージ~

 IBは、海外大学を目指す学生にとって、受験の手段としてだけでなく、大学進学後に役立つスキルを身につける経験としてもおすすめできるプログラムです。また、プログラムの構造上、読解力を養い、自ら考え探究する力を伸ばせるため、好奇心旺盛な学生がのびのびと学べる環境が整っています。
 カリキュラムの特性上、HL/SL(※5)の選択によってある程度難易度を調整できますが、言語・理数系・人文系の科目をバランスよく履修する必要があります。そのため、中学生の時点でまだ進路が明確に決まっていない場合でも、幅広い分野を経験できる点でおすすめです。
 私自身は、化学の先生に恵まれ、EEの科学実験やCASの課外活動を通じて、生物化学という現在専攻している分野に出会うことができました!
※5:大学やその後の職業において必要となる専門分野の知識やスキルを、大学入学前の段階で準備しておく観点から、6科目のうち、3~4科目を上級レベルHL(Higher Level)、その他を標準レベルSL(Standard Level)として学習する。

IB修了生インタビュー(山森 葉月さん)