IB教育の好事例

大学で活きるIBの学びと未来への展望

沼上 初日さん

加藤学園暁秀高校 2023年度卒

沼上 初日さん

2023年度、加藤学園暁秀高校を卒業し、現在シンガポールのNUS Business Schoolに 在学中で不動産について学ぶ。

兄弟のような仲間とのIBでの学び

現在、僕はシンガポールにあるNUSでの1年目の最初の学期が終わり、競争の激しい学習環境と新しい挑戦に刺激的な毎日を送っています。IBDPを修了した加藤学園には、幼少期から中高まで在学していました。特に自分の進路について考えた事がなかったのですが、中学の時に今後DPに進むかどうかを迷いました。それまで真剣に考えたことがなく、「勉強の目的」がわからなくなり、自分の進路について不安を感じていました。また、高校1年生の終わり頃に留学をして、様々な世界を見た後でIBを選択するべきかどうかを決めてもいいだろうと考えていました。結局は、新型コロナウイルスの影響でそれは実現しませんでしたが、当時家庭の方針として、父親は「自分の好きなように進路を」と言ってくれ、最終的には母の勧めもありIBを選択しましたが、その決断をして本当に良かったと感じています。

加藤学園では、最初は40名のクラスでしたが、最終的にDPの卒業時には18名でした。苦楽を共にしたメンバーで、高校生時代はさまざまな考えが交錯し、仲が悪くなることもありましたが、ずっと一緒にいることで本当に兄弟のような深い関係が築くことができました。お互いに対してのダイレクトな表現も絆の表れでした。しかし、ディスカッションやグループワークの際には、不思議なことに意見の相違でぶつかることがありませんでした。それは、IB生として他者の意見を受け入れることが意識されており、違った意見があってもお互いの妥協点を見つけ、しっかりと相手の意見を聞いた上で反論する姿勢があったからです。口論にはならず、学業とプライベートはしっかりと分けられていたと思います。

様々な立場からの意見を深く考察できるようになった教科を超えた授業

自分は理系ですが、数学は苦手で苦労しました。しかしMYPから学んできたこともあり、俯瞰的に見て挑戦していきました。化学の実験も失敗などを繰り返しましたが、そうした失敗からの立て直し自体がまた学びでもありました。歴史の授業では戦争の起こった原因や、スペイン内戦についての学習をした時など、どこが重要なのかという考え方にも人によって違いがある事に気づき、それぞれの立場からの見解の違いを議論すると、改めて更に深く考えさせられるのが面白かったです。そうやって、ニュースに出ている情報は全てではないと認識して見る力が身についたと思います。また、様々な立場からの議論を、教科を超えた領域で分析することができるようになりました。そして、ソフト面でも素晴らしい考え方を学ぶことができました。質問に対して適した答えを出し、決められた枠の中で作業するのではなく、IBでは与えられた情報を元に、正しい情報を覚えつつ自ら情報を組み合わせ、自分にとって正しい答えを導き出す能力が求められます。物事を分解し、分析し、考え、他者に伝える能力が向上したと感じています。

ソフトスキルと対話が生む充実したコミュニケーションを目指して

葛藤の中で選んだ今の大学でも、そういったIBで学んだソフトスキルが重要で、社会人の方に関わる機会に自分はどんなことを提供できるのかを考える際にも役立っています。これまで少人数の人と関わってきたので視野が狭くなりがちでしたが、他にも自分の知らない世界があることに気づき、他者との対話が重要であると感じました。現在、日本人学生会を運営しており、いろいろなイベントなどを通じて、日本からの交換留学生と関わる事があります。NUSはスタートアップ・ユニバーシティーを目指しており、インキュベーション施設やコワーキングスペースで様々な人々と交流することを意識しています。そこには日本人だけでなく外国人もおり、異なるバックグラウンドによる多様性が興味深いです。大学生から社長をしている方まで様々な人と触れ合い、就職や起業に対する考えやビジョンを伺う事ができ、自分もそのようになりたいと思いました。

交換留学生として来る学生は大学3年生が多く、日本の教育について改めて考えることがありますが、彼らとの議論は非常に刺激的です。日本人学生は情報量も多く、具体的な情報から物事を考える傾向があり、一方でIB生は自分の考え(抽象的なアイデア)から出発し、それに基づいて肉付けするような形で情報を調査するという方向性が違うと感じています。この異なるアプローチがお互いに面白い交流を生んでいます。また、社会人の方々からは昭和時代の教育についてのお話が興味深く、IBの理念を批判的精神で見つつ、他の教育と比較し考える姿勢も求められていると感じます。就職について聞く際も、様々な質問を通して自ら学ぼうとしています。コミュニケーションをとる際には、IBの学習者像に基づくオープンマインドの考え方が役に立っています。意見の相違があるからこそ、それを聞くことが重要であり、異なる意見が面白さを生むという視点が生まれます。この視点を取り入れ、異なる解釈を受け入れることを心がけています。ただし、オープンマインドになりすぎると、自分の意見を持たなくなる可能性があることもあります。そのため、自分の軸を持ちながらも、柔軟性を保ちたいと考えています。様々な方々の協力で、周囲の方々が助けてくださる環境も整っており、より充実したコミュニケーションが築けると感じています。

不動産業から教育へと繋ぐ夢

僕は自分の将来についてよく考えますが、まだ経験が足りないと感じています。将来、教育に携わりたいと思っていますが、それは50歳ぐらいになってからと考えています。その目標に対し、逆算して30歳までには独立し、社会に大きなインパクトを与えることを目指したいと考えた時に、起業という選択肢が浮かびました。そのためには、22歳から30歳までの期間にどのような経験を積むべきか、起業を成功させるためにはどのようなステップが必要かを考え、将来的に自分が成し遂げたいことを実現させたいです。

現在、専攻しているのは不動産ですが、先述したように教育にも強い興味を抱いています。これからも様々な場面で人と関わり、他者から教えられる機会もあると思います。僕は人を育てる分野に携わりたいと思っていると同時に、日本の教育を変えたいという想いも強くあり、IBで得た経験を次の世代に繋げていくべきだと感じています。そのためには大きな資金が必要なので、不動産に関して学んでいる所です。不動産は多岐にわたり、他の分野と組み合わせることができる興味深い分野なので、それを教育や生活に貢献できればと考えています。

IB生へのメッセージ

様々な状況により、思い通りに進学できる人、できない人がいると思いますが、IBが選択肢として可能であるならば、まずはIBプログラムを経験してみて、それから判断・検討するのも柔軟で良いと思います。実際にIBを取りながら、一般受験をする人もいます。始めたら、自分がこのIBプログラムを通して「どんな目的があって、何を学びたいのか」を理解すると、苦しいと感じることが減り、毎日の学習が楽しくなっていきますので、ぜひIBに参加してみてください。 

 

IB修了生インタビュー(沼上さん)記事PDFデータ