IB教育の好事例

「IBで学んだ能動的な姿勢と次の行動に繋げる好奇心」

水野蘭子さん

市立札幌開成中等教育学校 2022年度卒

水野蘭子さん

現在、University College Londonで3つの主要な学問分野である哲学、政治学、経済学 を統合したPPEという学部で学ぶ。柳井正財団第7期奨学生。

IBDPの中での深いコミュニケーションの構築

小学校4年生の時、自宅から距離的に近かった札幌開成が中高一貫教育を導入し、IBプログラムを開始するという話を聞いた際、大変興味を持ちました。当時、漠然とではありますが、海外の大学に関心があり、そのため札幌開成に入学することにしました。MYPを修了した後、最も迷ったのはDPを選択するかどうかでした。当時は学校としてIBの導入3期目であり、先輩方の進路や進学先についての情報が少ない中、直感を信じてDPに進むことを決めました。入学前からDPを意識していたことや、MYPでの学びが非常に有意義であったことも、決断の要因となりました。

DPの2年間は課題論文の執筆を含む多くの困難がありましたが、目の前のタスクに集中しました。特にTOK(Theory of Knowledge)に興味を持ち、自然科学や人文科学など異なる学問分野における知識の特性の違いを多面的に探求することに面白さを感じました。少人数クラスでの学びを通じ、異なる学問分野の知識や考え方が次第に繋がっていく感覚を得ました。また、先生との距離が近く、深い信頼関係を築くことができたため、「あなたなら大丈夫だよ」という先生方の言葉に精神的に支えられました。

一緒に学んだDPコースの5人は、当初は個人プレーのように見えましたが、次第に仲間意識が芽生え、互いに支え合い、協力して最終試験に向けた対策を進めました。卒業後、コースメイトのうち4名は国内の大学に進学し、1名は一般受験を経て大学に入学しました。もう1名は現在ニュージーランドでワーキングホリデーをしており、将来的には海外の大学へ進学する予定です。

10の学習者像を常に意識し、自分の学びを客観的に振り返り、苦手意識を克服

日常生活ではあまり意識していませんでしたが、IBプログラムの学びを振り返ると、気づかないうちに学習者像として大きく成長していたことを実感します。例えば「振り返りができる人」で言えば、日常生活においても授業でのプロジェクトにおいても、自発的に客観的に振り返る習慣が学年を重ねるごとに身についたように感じます。また「コミュニケーションができる人」の観点からは、中学生の頃はグループワークや人前で発言することに対して苦手意識を持っていましたが、現在ではそのような苦手意識はほとんど感じなくなりました。MYPやDPではプレゼンテーションの機会が多く、その過程で抵抗感が次第に薄れていきました。また、DPの2年間は先生方や大人と率直なコミュニケーションを取る機会が増え、自分の考えを発信することへの抵抗感がなくなったことも要因だと感じています。

教科においては、歴史に興味を持つようになり、MYP段階で好きではなかった理系の科目にも関心を持つようになりました。なぜその教科が面白いのかを突き詰めて考えるようになり、他の物事に対しても同じように考えるマインドセットを持つようになりました。「学ぶことは面白い」という気付きは大きく、引き続き常に学び続ける姿勢を大切にしたいと思うと同時に、これもまた「探求する人」としての成長の結果なのかなと思います。

DPの学びから生まれた好奇心は次の行動へつながる原動力

DPでは、能動的に学ぶ姿勢が身につきました。課題論文では、自分の進みたい分野に関連するテーマを選びました。同時に、興味のある分野だけに偏ることなく、面白そうだと感じた課外活動にも積極的に取り組みました。IBで身につけた習慣の一つは、分からないことや気になる情報、キーワードがあればすぐに調べることです。そして、情報の信憑性を考え、更に疑問に思ったことは再度調べるというサイクルが生まれ、新しいことを探求する楽しさに気がつくようになりました。

将来的な目標としては、日本に戻り公共政策に取り組みたいと考えています。民間の立場から官公庁やシンクタンクに関わり、社会の基盤となる仕組みを批判的に検証し、改善に向けた公共政策の提言や評価に携わりたいと考えています。これからの大学生活や就職後も、IBで身につけた「学び続ける姿勢」を大切にしていきたいです。

これからIB教育を考えている方へのメッセージ

IBのカリキュラムは、単に知識を学ぶだけでなく、多角的に物事を捉える力を養う教育です。多様な考えを柔軟に検討する姿勢も学べます。また、一方的な講義型ではなく、自ら資料を集めたりテーマを見つけたりする探究型の学びが特徴です。

IB教育は私の考え方に大きな影響を与えました。中学校段階から能動的に探究学習し、自身の好奇心を掘り下げることができます。MYPのカリキュラムは学校によって異なりますが、大学進学を直接左右するものではないので、少しでも興味があるならばMYPを選択し、IBの教育方法が自分に合うかどうかを吟味してからDPを選ぶと良いでしょう。もちろん、MYPの学び自体も大きな強みとなると思うので、興味のある方は迷わずMYPに挑戦してみてください。

IB修了生インタビュー(水野さん)