IB教育の好事例

「成長を見せる東南アジア圏内で、活躍する自分を目指して進む」

三ツ井愛弓さん

国連国際学校ハノイ校 2021年度卒

三ツ井愛弓さん

ベトナム・ハノイの国連国際学校を卒業後、シンガポール国立大学に進学、短期で北京大学に交換留学。東南アジアと日本との懸け橋になる事を目標にインターン活動にも精力的に臨む。

自信が砕かれたベトナムでのインター校での初日

私はベトナム・ハノイにある国連国際学校を卒業しました。日本では東京の中高一貫校に通っていましたが、その当時から教育関連の課外活動に取り組んだのを通じてIB教育という存在について認識していました。帰国子女のバックグラウンドを持つ学生が少なかったため、何かしらのグローバルなプログラムなどに参加する際に声がかかりやすい環境がありました。ハノイでは、父の知人の方から伺ったインター校がIBDPを提供していたので、積極的に試してみたいという気持ちがあり、父の赴任に伴い、私もベトナムに一緒に移りました。

小学校の頃は、父の仕事の関係で香港とシンガポールに住んでいました。小学校六年間はずっと日本語での教育でしたが、父から英語教育を受けていたので、中高一貫校に通っている間も他の学生と比べて英語は得意でした。そして、OECDという国際機関が主催していたプロジェクトでも、国際会議に何回か参加した経験もあったので、海外で学ぶことに関して根拠のない自信を持っていました。しかし、それはベトナムの学校の初日で打ち砕かれました。

言語の面でもそうですが、私にとっては初めてのインター校と言う場所で、かなり苦労しました。マイノリティと言う存在になる事を実感し、今まで経験しなかった居心地の悪さも味わいました。日々の授業や学校生活を過ごす時間も、時折ストレスの原因となりました。しかし、学校に入ってすぐのIBDP一年目の2学期目にコロナ渦に入り、3学期になりオンラインを導入した授業形態となった環境が逆に、自分の心理的な負担を低減し、新しい学校環境に慣れる上での助けになっていたのかもしれません。その当時の様々な経験は辛いものもありましたが、自分の性格などにかなりの影響を与え、良い意識の変化に繋がっていると思います。

クリティカルシンキングで物事の見方が変わる

IBを履修した際に特にチャレンジングだったのは歴史の授業です。日本とは違いクラスディスカッションがメインのスタイルでした。英語力の不足でそれについていけず、毎週約四回の授業はかなり苦痛でしたが、今思えば一番成長できた時期でもありました。また、大きく学んだと感じる点は、物事に対する見方に関してです。与えられた情報に対してどれだけクリティカルシンキングを駆使して、その正確性などを見抜けるかを求められました。また、議論の中で異なる視点に触れることで、日本人が持つステレオタイプと自分の見方を区別する練習にもなりました。また、IBのカリキュラムには複数の論文課題があり、IA(各教科の論文課題である内部評価課題)やEE(自由に研究内容が設定できる課題論文)での学びも印象深いものでした。EEでは東日本大震災後の福島の風評被害の影響を調べました。一次産業に焦点を当て、福島の農業について地道に情報源にアクセスしながら、オンラインで福島の方々からお話を聞かせていただくことができました。震災時は香港に住んでいたため、日本の方にとってどれだけ影響があったのかを学んでみたいという思いがありました。こうした実際の活動について手を動かしたことが、海外にいながら日本のことを外からみて分析し、紹介するという事に興味を持ったきっかけだったと思います。

自分なりのゴールを設定してアジアのハブ、シンガポールへ

こうしたIBの2年間はかなりの時間と努力を要しましたが、無事卒業まで辿り着きました。自分なりの小さなゴールを決めて、たとえ大きなのゴールは達成できなくても、少なくとも前回よりは成長しようとする向き合い方も良かったのだと思います。そして、「これで成長できたなら、大学でもう一度チャレンジしてみよう」と、海外進学を決意しました。アジアのハブにあるシンガポール国立大学に入学しました。大学での授業は非常に楽しく、高校時代から3年間、独学で学んだ中国語の成果も活かしたいと、昨年9月から1月まで中国の北京に交換留学も経験しました。現地では、文化や習慣などタブーとされる事象が存在することを考慮しています。実際に中国に来てみて、日本で抱いてきたイメージとは全く違うという事ばかりです。自分なりに中国について勉強してきたので、おぼろげながらの印象はありましたが、技術的に発展しているだけではなく、非常に安全であることも実感しました。その裏にはベトナムの社会主義に対する印象と似たものがあると思いますが、中国の13億の人口があるからこそ達成できるようなインフラなどの充実や利便性にも好印象があり、中国にとても魅力を感じています。

東南アジアと日本との懸け橋に

私はビジネススクールに入ると決めた時からマーケティング職に就くことを確信し、主にシンガポールでのインターンの経験を積みましたが、その幅の広さに気づかされました。実際に就職が近づくにつれて他の業界も視野に入れ、夏から日本でのコンサルティングファームのインターンで自分を試してみようと考えています。私は東南アジアには強い興味と愛着があり、東南アジアと日本を結び付けたいというのは、私にとって大きな夢です。これには2つの理由があります。香港での幼少期、父が現地のスタッフを我が家に招いた時に、その方々の語学力や、コミュニケーションスキル、向上心などを感じ、素晴らしいという印象を抱きました。しかし、日本に帰国した際に、東南アジアの方に対するステレオタイプ的な考えがあることに、中学生ながら将来の日本への懸念を抱いた事が理由の一つです。

もう一つはIBを履修したハノイでの二年間の経験です。ハノイは今まさに変化の途中にある都市で、毎日のように景色が変わっていきます。コロナ禍もあり、ストレスの多い時期でしたが、ベトナムの方は政府への信頼が厚いことを感じ、生活を通じて、社会主義国家の政治的な仕組みや人々のマインドセットに触れました。急成長中の都市は、東南アジアにはまだまだ転がっていて、大きく変化していく様子を実際に目にしたいという思いがあります。十年で達成できるかどうかはわかりませんが、キャリアを積んでいく中で、東南アジアの国々で必要とされるビジネスパーソンになりたいという目標もあります。最近では、中国語のレベルを向上させて中国での勤務を目指したいという気持ちも芽生えています。

IBを考えている方へのメッセージ

IBでは「ものに対する見方」をはっきりさせることがあらゆる授業で求められました。これは海外大学で学ぶための入門編となった要素だと思います。IBを経験していなければ、今の大学の学びについていけなかったと思うので、本当に感謝しています。また、レポートの書き方やプレゼンの仕方など海外大学生活で必要最低限なスキルも身につけることができました。人間関係の構築においても成長でき、大学でも冷静に対処でき、非常に役に立ちました。

しかし、私はIBは全ての人が目指すべきものではないという印象も持っています。それはネガティブな意味ではなく、日本の伝統的なカリキュラムでも学べることも非常に多いと考えているからです。私がIBを取得できたのは、中高一貫時代に基礎知識や問題集への取り組み能力が培われたおかげだと思います。私自身はベトナムでIB教育を経験したので、日本ではIB教育がどのように展開されるのか非常に興味深いです。

IB修了生インタビュー(三ツ井さん)記事PDFデータ