IB教育の好事例

IB教育は世界につながる学びの体験

内丸 理香子さん

仙台育英学園高等学校2019年度卒

内丸 理香子さん

仙台育英学園高等学校を2019年に卒業後、Asia Pacific University of Technology andInnovationを経て、University of Bradfordの修士課程に進学し、MA Peace / Conflict andDevelopmentコースを修了。

この雰囲気、向いてるんじゃない?なんか合いそうだね

 アメリカから帰国した後、日本の中学校に馴染むことができず、学校のシステムや日本人らしさに疑問を感じるようになりました。そのため、高校では留学をしたいと強く思うようになり、留学を前提に高校選びをしていました。そんな中、当時の中学校の先生から仙台育英学園のIBプログラムを紹介してもらい、IBについて知りました。実際に高校を訪れて授業を見学したとき、アメリカでの生活を思い出すような雰囲気があり、ここで授業を受けられたら楽しいだろうなと感じました。高校見学には母も一緒に行ってもらったのですが、母が「この雰囲気、向いてるんじゃない?なんか合いそうだね。」と言ってくれたことが、私がIB校に進学する決断を後押ししてくれたと今では思います。当初はIBがどんなものかよく分からなかたものの、なんとなく自分に合いそうだと感じ、楽しそうだという気持ちが大きかったです。

自分たちで企画を進めるワクワク感が大きかった

 IBの授業を通して、これまでの学校生活で一番楽しく学べたと感じています。IB以前の学びは、主にテストのために暗記する勉強が中心でしたが、IBでは自分から主体的に調べ、知識として吸収し、それを活用して点と点をつなげて考える学習方法が特徴的でした。このプロセスを通じて、学びそのものが自分の中でより深いものとなり、「知ること」の楽しさを実感しました。特に印象に残っているのは、友達とのディスカッションやプレゼンテーションです。ディスカッションでは、お互いに意見をぶつけ合いながら新たな視点を学ぶことができ、プレゼンテーションでは、発表内容をどのように構成すれば聞き手に深く伝わるか、どのように話せば興味を持ってもらえるかを模索しました。これらの活動を通じて、自分の考えを効果的に伝えるスキルを磨くことができました。これらの経験は、IBならではのものであり、今振り返ってもとても貴重だったと思います。
 さらに、CAS(*1)活動もIBで特に印象に残っている要素の一つです。私は老人ホームでプロジェクトを行い、自分たちに何ができるかを考えて行動しました。最初は難しさを感じましたが、その分、自分たちで企画を進めるワクワク感が大きかったことを覚えています。そして、入居者の方々の笑顔を見た時には、自分たちの活動が誰かの役に立てたことを実感でき、とても嬉しかったです。この経験は、私にとって今でも宝物であり、人のために何かをすることの喜びを教えてくれました。
 IBの授業は、単なる知識の習得を超えて、主体性や対話力、実践力を育む貴重な学びの場でした。この経験が、私の学びに対する姿勢を大きく変えてくれたと感じています。
*1:IBDPのコア科目の一つ(Creativity Activity Service、創造性、活動、奉仕)。

相手の意見に耳を傾けて理解する姿勢を身に着けるのは簡単なようで意外と難しい

 人の話をしっかり聞き、意見を交換するスキルが無意識に身についたと感じています。それまでは一方通行で自分の意見を述べることが多かったのですが、IBを経験する中で、単に自分の考えを伝えるだけでなく、友達の意見を聞き、合意点や相違点を理解するためにお互いに質問を重ねる。最終的にお互いが納得するまで話し合う、いわゆる会話のキャッチボールの質が大きく向上したと実感しています。特に、相手の意見に賛同できない場合でも、ただ否定するのではなく、相手の意見に耳を傾けて理解しようとする姿勢を少しずつ身につけることができました。簡単なようで意外と難しいこのスキルは、IBでのディスカッションや課題を通して自然と鍛えられたと思います。IBを通して培ったこうしたスキルや姿勢は、現在の私のコミュニケーションの基盤となっており、対話を重視したコミュニケーションを心がけるようになりました。

行き詰まって泣いてしまったこともあった

IBで特に困難だったことは2つあります。1つ目は、IA(*2)のテーマ決めです。数学が大の苦手だった私にとって、日常生活と数学を結びつけたテーマを考えるのは非常に難しく、どのように進めればいいか全く分かりませんでした。行き詰まって先生の前で泣いてしまったこともありましたが、先生が親身になってアドバイスをくれたおかげで、最終的にはテーマを決めて進めることができました。
 2つ目は、メンタル管理です。浮き沈みが激しい性格のため、友達と意見が合わなかったり、グループワークがうまく進まなかったりするとストレスを感じ、疲れがたまると人に当たってしまうこともありました。自暴自棄になりかけることもありましたが、両親が常にサポートしてくれ、話を聞いてくれたおかげで気持ちを切り替え、困難を乗り越えることができました。
*2:IBDP教科の探究課題。所属校において評価が行われる(Internal Assessment、内部評価課題)。

自ら行動を起こし、挑戦していく楽しさは現在も続いています

 IBを通して、特にコミュニケーションスキルが大きく向上したと感じています。先ほども述べたように、会話のキャッチボールが自然にできるようになり、相手の視点に立ったコミュニケーションを意識するようになりました。また、自分から新しいことに挑戦する楽しさを学べたこともIBの大きな成果の一つです。特にCAS活動を通じて、思いついたアイデアを実際に行動に移す力が身についたと思います。大学在学中には、自分のアイデアを形にする経験として、犬猫の保護施設のために個人レベルで物資支援を呼びかけ、実施しました。さらに、大学院では平和学を専攻していたこともあり、広島と長崎を事例に原子爆弾の危険性を訴えるイベントを開催しました。また、イギリスの大学院留学を終えた後には、ルワンダに渡航し、和解促進のためのインターンに挑戦するなど、自ら行動を起こし、挑戦していく楽しさは現在も続いています。
 IBで培った「相手を尊重するコミュニケーション力」と「主体的に挑戦する力」は、大学生活やその後の活動の中で確実に活かされています。

IBは自分と向き合うだけでなく、他人と向き合うきっかけにもなった

 IBは自分を大きく成長させるプログラムだと感じています。日本の学生が今後世界に羽ばたいていくための基礎を築くものになると思います。このプログラムを通じて、考え方を深める力や、自分の意見をどう伝えるか、人の視点に立って相手の意見を聞くスキルなど、グローバル人材として必要不可欠な要素を身につけることができます。正直、高校卒業時にはこれらのスキルがどのように自分に役立つかをあまり実感していませんでした。大学受験では、英語外部試のIELTSスコアを活用して受験しました。そのため私の場合、IB自体が直接的に大学受験に役立つ機会は少なかったです。
 一方で大学を卒業した今、IBで培ったものがさまざまな場面で活かされていることを実感しています。もちろん、IBの過程では非常にしんどい時期もありました。決して簡単なプログラムではないため、多くの困難に直面することもありますが、その分、多くのことを吸収することができます。特に、自分で何かを生み出し、困難を自分で乗り越える力が身についたと感じます。私自身も、このプログラムを通じて自主性を大きく鍛えられました。また、IBは自分と向き合うだけでなく、他人と向き合うきっかけにもなりました。特に、他の人と協力して活動したり、CAS活動を通じて他人のために行動したりする経験が多かったです。他人を思いやりながら行動することを学んだこれらの経験は、現在の私の考え方や行動に大きな影響を与えています。IBは、自分を大きく成長させたい方や、将来の目標がまだ明確でなくても「頑張ってみたい」と思う方にぜひ挑戦してほしいプログラムです。困難を乗り越えるたびに成長を実感できる、非常に価値のある経験が得られるはずです