IB教育の好事例
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岡山理科大学2022年度卒
仲里 克樹さん
岡山理科大学理学部で応用数学科を専攻。また国際バカロレア教員養成プログラム(IBEC)を修了。2022年3月に同大学卒業。現在、岡山理科大学企画部企画広報課にて大学のブランド形成や、イメージ戦略に携わり、学生教育にも尽力している。
― 国際バカロレア教員養成プログラム(IBEC)を履修したきっかけを教えてください。
IBECを履修しようと思ったきっかけは、高校生の頃に数学の教員を目指していたことでした。教員である両親から、「これからの教員には、生徒が自ら考え、判断する力を育むことが求められる」とアドバイスを受け、教員としてのスキルアップと付加価値を高めるために、IBについてインターネットで調べてみたことがきっかけです。
―大学に進学された際、IBECを履修することを考えていましたか?
高校生の頃、岡山理科大学にはIB教員養成プログラムがあり、数学の資格取得も可能だと知ったため、迷わず同大学に進学しました。元々、公立学校で教員として生徒に数学を教えることを希望していましたが、IBの教育理念に共感し、そのスキルやノウハウを学びたいと考え、IBECの履修を決意しました。
―IBECでの学びについて教えてください。
IBECで「知の理論(TOK)」を学んで、知識や知ることについての概念が大きく変わりました。 以前は、教育とは「先生が生徒に知識を教える」ことだと考えていましたが、TOKを通して、教員の役割は「生徒が主体的に学び、探究できるような環境を提供すること」であると理解しました。教師も生徒も全員が学習者で、知識を共有し探究し続けることや、多様な視点から問いを深めていくことが重要だと気づきました。 様々な価値観や考え方がある中で、批判的に思考し、他者との考え方の違いを尊重することは、これからの社会で求められる重要な能力だと感じています。TOKで学んだことは、教科や学校に限らず、あらゆる場面で活かせる普遍的な考え方だと確信しています。思考力や問題解決力が求められる現代社会において、多角的な視点から物事を捉え、固定観念にとらわれない柔軟な思考を持つことの大切さを学びました。
―IBECで、IB校を見学したり、教育実習生として教壇に立つ経験はありましたか?
IBECでは、IB校での教育実習に加え、公立学校でも実習を行う機会に恵まれました。公立学校では、IB教育がまだ十分に浸透していない状況だったため、IB教育の理念や特徴から説明を始めました。実習では、担当教員のサポートのもと、「1次関数の公式は本当に正しいのか」というテーマで、IB的な探究学習を取り入れた授業を設計し、実践しました。生徒たちには、公立校で当たり前に教えられてきた1次関数の公式を批判的に考え、その根拠を自ら探究してもらう機会を提供しました。しかし、IB教育に慣れていない生徒たちにとって、いきなりこのようなIB的な要素を含んだ数学の授業は難しく、特に数学に苦手意識を持っている生徒が多い中で授業を進めていくことは難しかったです。
― 社会人になってから、IBに関する知識や経験が役立ったと感じる場面はありましたか?
社会人になってから、IBで学んだことが、現在の仕事にどのように活かされているかお話しします。 私は現在、教育現場で働いていますが、直接的に学問を教える立場ではありません。しかし、学生たちとゼロから何かを創り出す機会が多く、IBで培った「多角的な視点」や「批判的思考力」が非常に役立っています。例えば、学生たちと議論をしている時、IBで学んだ「探究心」が、新しいアイデアを生み出す力に繋がっていると感じます。また、自分が出した答えに 対して、常に「 本当にこれで正しい のか?」と疑問を持ち、深く掘り下げて考える習慣も身につきました。IBで学んだこれらの能力は、教員だけでなく、あらゆる職業で求められる普遍的なものだと考えています。特に、変化が激しい現代社会においては、多様な視点から問題を捉え、柔軟な思考で解決策を見出す力が不可欠です。
― 今後のキャリアプランニングについて、IBECで学ばれたことで意識が変わりましたか?
IBECでの学びを通じて、教員というキャリアにとどまらず、さまざまな可能性に気づくことができました。公立学校での教職という当初の目標に加え、IB教育の理念を活かせる幅広い分野で活躍したいという新たな目標も生まれました。現在は大学職員として、大学の 発展や学生の 教 育に尽力しています。私自身、IBを含め岡山理科大学で多くのことを学び、大きく成長することができました。岡山理科大学に育ててもらったと感じており、その恩返しがしたいという思いから、現在の職を選びました。今後は、大学の発展に貢献するとともに、IB教育の推進にも力を尽くしていきたいと考えています。さらに、生涯学習者として学び続け、学生の成長に寄り添いながら、自分自身も成長し続けられるよう努力していきます。
― 日本の児童・生徒にIB教育を勧めたいと思いますか?
日本の児童・生徒にIB教育をお勧めしますか?という問いに対して、私は「ぜひ経験してほしい」と答えます。IB教育は、単に知識を詰め込むだけでなく、自ら考え、探究する力を養うことを重視します。この考え方は、教育の場だけでなく、社会に出てからも非常に役立つものだと確信しています。私自身、IB教育を通じて、物事を多角的に捉え、批判的に思考する力を養うことができました。この力は、私に限ることだけではなく、職業や立場など場面関係なく活用される考え 方ではないかと思います。特に、グローバル化が進み、VUCA時代の到来が叫ばれる現代社会においては、多様な価 値観を尊重し、複雑な問題に対して柔軟に対応できる人材が求められています。IB教育は、そうした人材を育成するための最適なプログラムの一つと言えると思います。
― これからIBECを履修しようと考えている大学生へのアドバイスがあれば教えてください。
IBECの履修を検討されている皆さんへ、少しアドバイスをさせてください。まずは、様々なことに積極的にチャレンジしてみてください。IBECの学びは、教科書にとらわれない発見や、自分自身の考えを深めるための貴重な機会となるはずです。そして、IBECでの学びを通して、皆さんの教育に対する概念は大きく変わるはずです。また、疑問に思ったことは、どんな些細な事でも、先生や周りの友人と共有してみてください。積極的に質問をすることは、より深い理解へとつながる第一歩です。当たり前のことだと思っていることでも、別の視点から捉えてみると、新たな発見があるかもしれません。